幸せをつかむ LOVE握力

 

Vol.56 オトコのカタチ……

 

 

村山由佳さんの「ダブル・ファンタジー」という小説の終わりのほうに
こんな台詞が出てくる。

“俺と会わない間に、彼と、した?”

……

“わかるんだよね、そういうのって”

……

“中が、変わってる。
俺の形じゃなくなってる。
何度も何度も抱いて、やっと俺のかたちに作り変えたと思ったのにな。”


この衝撃的な台詞は、この作品の宣伝広告に使われたせいもあって
巷でかなりポピュラーだ。
だから、気のおけない仲間うちでいわゆる「わい談」になったときしばしば
話題になる。


そもそも、この小説の主人公は35才、既婚、子供なしの売れっ子
女流脚本家。
生まれつき性欲が強くて、1冊の中でたしか6人の男の人と続々に関係を
持っていく。
1冊の中で、男ではなく女の人が6人と寝るというのもかなり画期的だと思う
けれど、大胆な性描写だけでなくリアルな性衝動描写が迫力満点。
へえ〜、女の人ってこんなふうに発情するんだって男女を問わず
開眼させられる感じだ。
恋愛官能小説を頭で書く女流作家が多く、読んでいてしらけてしまうことが
よくあるが、村山さんの小説は体感で書いている迫力が伝えわってきて
ガーンと1発顔面パンチを喰らった読後感がある。
勿論、文学的にも秀でていて3つの格調ある文学賞も受賞しているから
ただものではない。



すみません。
書評を書いているわけではないので、話を元に戻します。
冒頭のこの本をネタにしたわい談。
「やだぁ〜、かたちが相手のオトコのかたちになっちゃうなんてありえないよォ。」
と女A。
「いやいや、実はあるんだって、これが……。」
と既婚のエリート医師。
「医学的な話じゃなくてあなたの体験でしょ?」と女A。
「いや、まあ〜そうだけどさ。」
「だって、赤ん坊が通過するところよ。
あんなに自由に伸び縮みするところが、ひとつのかたちに
固定するわけないじゃない。」と女B(他でもない私)
「いや、実際あると思うよ。」と別の男A。
そんなわけで、男たちのなかには自分の形になって欲しいという
願望があるせいか、かたち肯定派が多いのだが、そんなの
あるわけないじゃんというのがそこにいた女たち全員の言い分。



SEXをダンスにたとえれば、ダンスを踊る相手が突然変わったときの
違和感というのは確かにある。
ひとつは匂いや肌触りといった感触の問題。
もうひとつは、踊り方・リードの仕方といった手法の問題。
遊びなれた女のコはこれらを味わって楽しんだりするんだろうけど、
基本的には戸惑いのほうが大きいような気がする。
化粧品のパフじゃあないんだから、新しければすべて良しっていうわけじゃあ
ないもんね。
ずばり、相手の形状の違いっていうのはどうなんだろうか。
大小、長短、硬軟。
極端な違いは前の人と明らかに違うってわかるだろうけど、
その差異なんて、たちまち心の結びつきの強さに追い越されてしまって
やがてぶっ飛んじゃうような気がする。
それにしても、好きなオトコのかたちに固定されるという
「ファンタジー」 つまりおとぎ話のような現実が実際あったら
なんだか素敵。


ちなみに、酔ったついでに
わい談仲間の男たちに聞いていた。
「女の人の形ってそれぞれそんなに違うってわかるの?」
「あったり前でしょ!
温度・湿度・広さ・深さ。
相手によって、ぜーんぜん違います。」

日時: 2010年02月01日

Profile

南美希子

みなみ・みきこ
東京生まれ。テレビ朝日アナウンサーをへてフリーランスに。数々の番組でキャスター、コメンテーターとして活動。またオシャレ、結婚、子育て・出産、美容などのエッセイでも人気。著書に『オバサンになりたくない』『お嫁に行くまでの女磨き』『男の勘違い』他。まさに“Glamorous way of life”の先駆者レディ。