もし恋愛が、密室で飼われるかごの鳥のようなものだったら、
それはきっと、そのうち息苦しさで死んでしまうと思う。
昔、『髪結いの亭主』というフランス映画を観た。
日本にも来日したことのある、わたしの大好きなパトリス・ルコントという監督の作品。
同じく彼の作品、『橋の上の少女』という映画を観た翌日、
長かった自分の髪を、主演女優と同じベリーショートに
してしまったこともあるくらいパトリス・ルコントの映画が好き。
で、『髪結いの亭主』のストーリーはざっとこんな感じ。
もう古い映画なので、記憶もおぼろげなのだけど......。
あるところに、とてもとても仲のいい夫婦がいた。
二人であまり客の来ない理髪店を経営していた。
二人はいつも一緒で、いつも顔をつき合わせて暮らしていた。
でも、ものすごく愛し合っていたのだ。
どちらかが浮気でもすれば、ドキドキするようなストーリー
展開になっていたんだろうけど、
仲の良いまま、淡々と物語は続いていった。
でも、映画のラストシーンが急に後頭部を殴られたみたいに衝撃的だった。
ある大雨の日、突然妻が濁流に身投げしてしまうのだ。
こんなに綺麗で、あんなに愛されているのになぜ?なぜ?って
観客は思ったことだろう。
でも私には、彼女が命を絶った理由がようく分かった。
他人から鑑賞されることも、交わりあうこともない愛。
そして、それがこの先もずっと死ぬまで続いていくことの息苦しさに、
きっと彼女は耐えられなくなったんだろうなあって。
どんなに大好きな彼とでも、
人目に触れることなく、他人と交わりあうことなく、
ただただ二人して愛し合うだけで終始したら、
多分なんらかの形で自爆してしまうと思う。
第三者と関わり合い、カップルとみなされることで
愛はより輝きを増し、永続するんだと思う。
だから、なんだかんだ言っても結婚が恋愛のゴールになり、
夫婦でホームパーティに出たり、他のカップルと
ゴルフをしたりして、男と女の関係を永らえていくんだと思う。
昔、社交的な彼と付き合っていて、二人してよく
パーティや友人たちとの食事会にでたものだ。
「これ以上お似合いのカップルはいないね」って
周囲の人から言われることが私にとって、
彼から「愛しているよ」って囁かれるのと同じくらい
しあわせだった。
どうして別れちゃったんだろうね......。
反対に、特に大きな不満もなく付き合っていた恋人に
突然私は別れを告げた。
友人から、「カレも連れておいでよ。みんなで飲もうよ」って
誘われて当たり前のようにカレに電話したらこう言われたから。
「ごめん。ボク、知らない人と会話するの苦手なんだ。
キミと二人だけがいい」ですって!
私には信じられない感覚だった。
私自身『髪結いの亭主』のトラウマがあるのかも。
今の夫と結婚した理由のひとつは、彼が社交的だから、だもの。




