幸せをつかむ LOVE握力

 

Vol.59 バストケアに励む理由

 

バストケアには20代の頃からものすごく気を使ってきた。
代々バストの豊かな家系で、まだ当時ブラはAカップかBカップ
しか売っていない時代だったんだけど、多分Gカップはあったと思う。


これって自慢じゃないからね。
当時はいわゆる「巨乳派」って結構迫害されていて、バストの大きい女は
頭が悪いなんて公然と言われてた。
おまけに身持ちの悪い
ふしだらなイメージでとらえられていたから、誇るどころか肩身が狭かった。
実名は出せないけど、同世代のアイドル歌手でバストの大きい
子と着替えのとき一緒になって、同病相哀れんだりしてた。
彼女は大きさを隠すために仕事のときはさらし(分かる?)巻いて押さえるようにマネージャーからいわれてそうしてるんだって言ってた。
オッパイの大きさ誇るグラドル全盛の今から考えたら想像もつかないでしょう?
(わあ、私って一体いつの時代のオンナなんだろう〜!)
で、今でこそバストケア用品は溢れてるし、バストケアのエステまで
あるくらいだけど、当時はバストケアという概念さえなかった。
そんな中、革新的だったのはクラランス。
いち早く日本でバストケア用品を売り出した。
赤いトニックは発売当初から使ってたんだけど、発売と同時に
飛びついたのが「モデル ビュスト」っていうバストケアのための
器具。
これが傑作で、長いホースがついていて水道の蛇口につなげるように
なってるわけ。
先端にはバストが1個分入る大きなプラスチックのカップがついていて
その中にプロペラがあるの。
つまりホースにつないだ水道の水が勢い良く出ると回転して、バストの
マッサージをしてくれるというわけ。
もう売っていないみたいだけど、あれは名品だったなあ。
カレなんかにみられたら恥ずかしくなるような代物なんだけど
私にとっては手離せない愛用品だった。
「笑っていいとも」のテレホンショッキングに出たとき、タモリさんに
この器具の話をしたらそれはもううけにうけちゃって……。


いつの間にかこの「モデル ビュスト」も使わなくなっちゃうわけだけど、
思えば今だにバストケアはしっかり続けている。
勿論重力の法則により、ある年齢を境に落ちるは、ハリは失うはで
それなりにバストも年取ってきてるんだけど、きちんと手入れし続けてる
バストってどことなくかわゆいのよね。マジで。
デコルテケアしてない人はオンナの風上にも置けないって思うけど
バストケアもして当然の時代だと思う。
オンナを張って生きる覚悟ならね。


さてさて、そのオンナを張るための最強の武器であるはずのバストが
実はもっと大切な別の用途のためにあると思い知ったのは
今から13年前のこと。
息子を出産してから……。
たとえ男の人が喜ぶ大きなバストでも、母乳が出なければ
全く意味ないってわかったの。
私の場合、高齢出産だったこともあって母乳の出が悪くって、
それはそれは苦労した。
母乳がいかに赤ちゃんに必要不可欠かっていう事は今更いうまでもないんだけど、いざ子供を産んでみて赤ちゃんの命の糧であるこの母乳
が満足に与えられなくてものすごく悩んだ。
で、昔は「モデル ビュスト」使ってお手入れに精を出していたバストに、
今度は市販の注射器みたいな搾乳機をあてがって自分で
一生懸命乳しぼりするわけ。
お乳も痛いし、それよりも腱鞘炎おこすくらい力がいるの。
赤ちゃんが眠っている間、すこしでも多くしぼって飲ませようと
思うんだけど、もともと出ずらいオッパイだからせいぜいショットグラスに
1杯程、1回に30cc位しか出てこない。
それで、色々調べて「桶谷式」っていう手技乳房治療を
受けに行ったの。
母乳をだすためのオッパイマッサージというわけね。
これが恥ずかしいのなんのって。
オッパイべロ〜ンと出して横たわって揉みほぐしてもらうわけなんだけど、
マッサージする人と目があったりするとバツが悪くてさぁ。
でも、あらあら不思議。
いつの間にか噴水みたいにピューってオッパイが噴き出してくるわけ。
やったあー!と思ったのも束の間。
その後、とんでもない使命を課せられたの。
厳格な食事制限。(粗食じゃあないとダメなんだって。母乳のためには。)
そして、そこに暫く通い続けること。
夜中も3時間ごとに起きて授乳し続けること。
もう、仕事初めてたから夜中に何回も起きてたら身がもたないよ〜
って感じ。
日中の3時間ごとの授乳でさえ不可能だし、そこに通う時間も
そうそう取れない。
赤ちゃんはかけがえのない存在だけど、私は働くオンナでもあるんだよ!
私から仕事取ったら窒息しちゃうよ〜ってね。
そう思ったら、ジレンマでポロポロポロポロ涙がこぼれてくるのね。
見掛け倒しで役立たずの自分のバストをどんなに恨んだことか。



結局、吹っ切って母乳は諦め粉ミルク中心でいこう、その代わり
子供の離乳食以降の食事には最大限努力して健康に育つ食事を
心掛けよう!って心に誓ったの。


そんなわけで、そんなわけで、
バストはオンナを張るためのものだけにあらず、
命を育む大切なものだって知る経験を経た今、
昔以上に大切なバストのケアに励む今日この頃なの。

日時: 2010年03月05日

Profile

南美希子

みなみ・みきこ
東京生まれ。テレビ朝日アナウンサーをへてフリーランスに。数々の番組でキャスター、コメンテーターとして活動。またオシャレ、結婚、子育て・出産、美容などのエッセイでも人気。著書に『オバサンになりたくない』『お嫁に行くまでの女磨き』『男の勘違い』他。まさに“Glamorous way of life”の先駆者レディ。