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GLAMOROUS

おとこのつうしんぼ

2010.06.25

きっと、もっと、いい女/傷の深さ度★★★★☆

 「恋人はいるけど、結婚には踏み切れない。それは、私にはきっと、もっと、いい男がいるはずだって、心のどこかで思ってしまっているから」と、女友達Dがそっと私に告白してくれた時、彼女は26だった。
 29になった今も当時からの彼と付き合っているDの状況は、以前からそうは変わらない。でも、心情の方には、外には見えない大きな変化があるってDは言う。


 「なんかね、29歳っていう年齢を口にすると、私自身は別になんとも思っていなくったって世間がね、なんとなく気まずそうに私を見ることがある」
 もし数字に花言葉みたいなものがあるとしたら、“29”のそれはきっと“焦り”。本人の意思や状況とはまったく別のところで、数字自体がそんな匂いを勝手にかもしだす。
 「そうするとね、私、別に聞かれてもいないのに、会話の中で“恋人いる”っていうことを、さりげなく知らせようと必死になってるんだよ」
変だよね。29って数字は、他人だけでなく本人まで、そんなふうに勝手にうごかすの。
 「でもね、それを知るとみんな、ホッとしたような顔するよ。それ見て私も、ホッとする……」。
 うん、そうなんだよね。『恋人がいる』ってもう既に、ひとつの立派な肩書きなんだ。いろんな場面でとても便利に働いては、女をそっと守ってくれるの。
 「だから、あぁ、やっぱり別れられないよって、また思う」ってDが言う。


「きっと、もっと、いい男――なんてね。そんな風に、自分本位で自分勝手な想いを、まるで恋愛関係の中で自分が優位に立っているかのように言えた頃は、まだよかったよ」
 うん、そうだね。『恋人がいる』って事実はいつだって、女をちょっぴり強気にするから。裏を返せば、『恋人』っていう存在は、ただそれだけで、女としての絶対的な自信をくれるってことだけど。
 「あれから3年。今はね、彼とのケンカの後で、こう思ってしまう瞬間が何度もある。きっと、もっと、いい女――」
 あ、どうしよう。その瞬間に漂う空気を私も知っていたから、Dの言葉の続きを聞く前に私は、「分かる、分かるよ」って深く、それはもう深く、頷いた。
 (その時、私は26だったけど、恋愛の中で、29になったDと同じようなところに立っていた。恋愛の内側では、年齢なんてまったく関係ないの。数字が作用するのは、恋愛が面している、外側の世界のでのみ。もちろんそこからのプレッシャーが恋愛の中にまで影響を与える“副作用”は、あるけれど)。
  
 「恋人という存在がありながら、きっと、もっと、いい男がいるんじゃないか、なんて調子にノってほざけるほどに自惚れた自信は、もうないよ。だって、彼のことを誰よりもよく知っているからこそ、私、分かっちゃったんだもん。彼にはもっと、私よりも合う女が絶対にいるっていうこと……」
 「それ、悟った瞬間、ねぇ、泣いた?」って聞いた私に、「ううん。彼にはきっと、もっと、いい女がいるって、とっても冷静に、思っただけだよ」ってDは言った。

 
 ねぇ、
 どうしてだろうね。
 いつだって、
 ひとつのコインは、
 裏と表が、背中合わせ。


 表の世界に対して『恋人がいる』って言う時は、その『関係』自体が、他のどんなことよりも女としての自信をあたえてくれるのに、その裏にあるリアルな『恋愛関係』の中では、ジワリジワリと女としての自信がむしばまれていったりする。
 欲張りなのかな。夢みすぎなのかな。『好きな男に、いい女だと思われて、愛されたい』。願っているのはただ、それだけなのに。
 どっちが悪いわけでもなく、相性のズレが引き金となって、二人の歯車がズレ始めた。ただそれだけなのに、いつの間にか、自分は好きな男にとってのいい女ではなくなっていた。
 そのことに気付いてしまった時、それは、彼が自分にとってのいい男ではないかもしれないって運命を疑っていた時の何十倍も、冷静に深く、傷つくね。

Bookes

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おとこのつうしんぼ 
〔第1弾〕
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〔第2弾〕
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