BEST FRIENDS FOREVER/縛り合う女の子度★★★★★
ふたつに割れた、ハートの形の、ネックレスチャーム。そこに刻まれた、ふたつでひとつのメッセージ。BEST FRIENDS FOREVER。
約20年前、私が小学生の頃に、当時住んでいたニューヨークで大流行していたベストフレンドネックレス。まるで、永遠の愛を誓い合い、おそろいの指輪を左手の薬指にはめる男女のように、永遠の友情を誓い合ったふたりの女の子は、首におそろいのネックレスをつけていた。
まぁ、なんて可愛いの! そんな私たちを見てオトナたちは微笑んでいたけれど、そのネックレスが運んでくるモンダイはいつだって、オトナの女顔負けのドロッとしたものだった。
あのコとこのコは親友同士。私だってあのコとネックレスをしたかったのに。え、うそ。あのコ、私があげたネックレスを外して、違うコと新しいネックレスをしてる。フンッ! 仕方ないじゃない、私は今は、このコと親友なの。ねぇ、○○ちゃん、アイラブユー。私たち、ずっとベストフレンドだよ。私以外と私以上に、仲良くなんてしないでね。
小学5年生。カラダはまだ女の子な私たちを悩ませた、もう立派に女な、嫉妬と束縛。自分の親友に対する強すぎるほどの執着はまるで、オトナの女が自分の男にするソレにそっくりだった。もう親に甘えられるほどにはコドモじゃなくて、でも男に甘えられるほどにはオトナじゃなかった私たちは、もてあました「愛」の欲求を、女友達にぶつけていた。
いつか私たちにも、男ができる。もちろん、私たちはそのことを知っていた。あぁ、そうか、親友がひとり、恋人がひとり。自分にとって最も大事な男と女、それぞれ一人ずついれば、素晴らしい人生のできあがりなのかもしれない。
親友と分け合ったハートのネックレスを首に下げ、まだバージンな左手の薬指をかざしてはソコに未来の指輪を想像し、そんな風に考えていた、私のプレティーン時代。
欲しいのは、親友と呼べるひとりの女に、恋人と呼べるひとりの男。人生の中にふたりを持つことで、私が解消しようとしていたのは、自分の寂しさ。避けようとしていたのは、ひとりぼっち。
ダレといようと、自分の中の孤独としっかり向き合うことこそ人生なのだと、オトナになった今なら分かる。相手が男でも、女でも、そこは同じ。そして、大好きな女友達への感情はどこか、男への恋愛感情と似ていたりもするけれど、男との恋愛関係と、女との友情関係には、やっぱり大きな違いがある。
他の女を愛さないで、と強く激しく思わずにはいられない、男との関係には必然的にクレイジーな縛りが生まれてしまうけれど(男と女が愛し合うってそういうことだと思う)、女友達とは、もっと冷静で、マトモな愛の関係を、築くことができるって思う。避けるべきは、女同士の、束縛だ。
「親友」とか「仲間」とか、「永遠」とか「約束」という強いコトバを使って、女友達を自分の人生に固定しようとしては、ダメなんだ。だって、たとえそれが1人の親友でも、5人の仲間でも、一緒にいて欲しいと思う女友達を、自分の人生に画ビョウでシッカリと留めるようにして円をつくることには、ムリがある。
しばらくのあいだは、とても温かく思えるその場所も、それぞれの人生が流れてゆく過程において、ガッチリと固定されたその円の中は、次第にフツフツと煮詰まってゆくからだ。
男と女、「お互いだけだよ」という約束を交わす、1対1のガチな関係に、女友達という風とおしが必要なように、女と女の友情にだって、「お互い以外の友達」という存在が必要だ。
人生の流れにそって、新しい友達ができたり、昔からの友達と離れたりするのは、むしろとても自然なこと。今までも、私たちは何度もそれを繰り返してきた。ただ、そこには「クラス変え」や「卒業」という、全員がゴソッと入れ替わる行事があったから、そう悩むことなくそういうものだと、私たちは変化を受け入れてきた。
結婚や出産、仕事などでそれぞれの人生が枝別れし始める、三十路前後。「女友達の清算期」なんて言われるとビビってしまうけれど、この変化は実は、そんな学校行事と変わらないくらい必然的なものなのかも。
でも、そこに伴う胸の痛みは、かなり違う。目にみえる行事のチカラを借りずに、自らの手で、女友達とのあいだに距離を置いたり置かれたりするこの変化は心に、これまでのそれとは比べものにならない、切なさと悲しさ、寂しさを感じさせる。
オトナになって、いろんなことが見えてきた。女友達と「お互いだけだよ」という親友の誓いを結ぶことや、「うちらで仲間」とグループを組むことを、私は高校卒業と同時にピタリとやめた。
これからも、仲の良い友人同士で集まってワイワイ楽しむことはあっても、ひとつのグループに属するというカタチをとることは、もう二度としないと思う。女友達とは常に、1対1で、お互いの自由の上に成り立つ、“サシで深い関係”を築いていきたいからだ。新しい出会いも古くからの縁も、どちらも大切にしていきたい。
うん。私は今、心からそう思っている。でも、消すことはできないよね。そんな風にオトナになった、自分でも時々イヤになるほど器用になった今の私の中にもまだ、女の子だったあの頃の不器用な自分は、確かにいる。
夫がくれた結婚指輪を左手の薬指にはめた私は、時々、とっくになくしてしまったハートのネックレスを思い出す。
BEST FRIENDS FOREVER。他のコと、仲良くしたらイヤだと思うほどの自分勝手な愛情と、まったく同じようなスピードでお互いの人生がすすんでゆくなんていう無謀なことを、本気で願うほどの執着ぶり。
もうそこには戻れないけれど、あれはあれで美しかったと、今の私は、ほとんど泣きそうなキモチで思っている。





